対談・外伝

 「対談」の原型は、その昔に僕が世話役をやっていた30人ほどのバンド集団で、僕が勝手に会報めいたものを作っていましたが、5号を超える頃からネタが切れ、その制作中にたまたま電話してきた仲間との雑談を、相手の了解をとってテープに録り、苦し紛れにそれを「対談」として文に起こしたものです。意外や意外、これが「臨場感があって面白い」と好評で、いつの間にか会報のメイン企画となっていたのでした。

 このホームページを始めて、いつの間にかお仲間も増え、ある時ふと発作的に「web上で対談をやってみたいな」と思い、軽い気持ちで日記かBBSに「僕と対談しませんか?」と載せてみました。本音を書けば、「誰も反応しないだろうな」と思っていましたが、手を挙げてくださる方が続出、現在までに10回を超える我がSHALLOW&NARROWの名物企画になりました。
 たまにボーっとしている時に、今はweb世界から引退されている方とのやりとりなど、対談前後の気分を思い出すことがあり、少しそんな部分をまとめてみようかと思った次第です。お相手の詳細や人となりは、それぞれの本文をお読みいただくとして。


 「対談やりませんか」という提案に、真っ先に手を挙げてくださったのが、すづきさんでした。電話を差し上げてワーッとしゃべって、というスタイルは実際上無理だと思ったので、メールでのやりとりとしました。僕が考えに考えてからやりとりを開始せず、ほとんど思いつきの数項目の質問を一度に送り、すづきさんに鋭くお答えいただいたものと構成したので、丁々発止のやりとりにならず、今のスタイルならばもう少し「生きた」対談になったと思われ、すづきさんには申し訳ないことをしました。是非もう一度対談してみたい方です。

 当時ドイツ在住の千波(旧しろがゆ)さんは、それまでのおつきあいで「諸事控えめでそれとなくそっと型」の方だと思っていたので、「お誘いしても対談の相手なんかしてくれないだろな」と思っていたのに、予想に反して即座に「やりますっ!」と手を挙げてくださいました。すづきさん同様の手法でわっと全部の質問をお送りして、一度にお答えいただいたものを構成しましたので、やはり臨場感というか「ナマ」な雰囲気には遠い対談になっていますが、彼女の端正な雰囲気は出ていると思います。

 すづきさんとの対談を読んでいただき、非常に面白がってくださって、「次は私」と参加されたのが、りずさんでした。それまでのおつきあいで、彼女の独特の個性に興味を持っていた僕ですが、やはり予想通りの面白さでした。彼女の魅力は「ドライで少しシニカルで暗喩的」だと思っていたのですが、対談で表れた表情というのは、生身の熱い面が強いのだなぁ、と思いました。

 対談4回目にして旧知の、当時コアな音楽サイトを展開していた実生活での友人Building Press君(旧Secret Records君)と対談しました。対談自体は前の三者と同様メールでやりとりし、一部電話で雑談する中で「対談これでいい?」という確認をしてました。そういう雑談の方が当人同士は面白かったのですが、読む方にはまったくわからない話ばかりなので載せませんでしたが(笑)。実生活で僕がもっとも愛する友人なのですが、外見は今時の若者なのに中身が古き良き日本人、というところが対談に反映(外見はわからないでしょうが)されていると思います。

 みみたさんはトロント在でイラストに異能を発揮されています。僕にはイラストの才能が一切なく、特に抽象絵画への理解力が著しく低いために、この対談では海外暮らしにフォーカスして語ってみました。写真などで拝見したことから推測していた暮らしぶりを、対談で裏書きされた暮らしぶりから、ご苦労も多いでしょうが「良い暮らしをされているんだなぁ…」と思いました。

 mamikさんは、とにかくウィットに富んだユーモアが楽しい方ですが、この回からまとめて質問をお送りするスタイルをやめて一問一答に変えたために、mamikさんが送ってくださる圧倒的なユーモアと文章量が爆発したメールを毎晩帰宅後に読むたびに、ディスプレイの前で声を出して笑う、という初めての経験をしました。「常連ばかりで、初めて書込みした時は勇気がいった」と告白し、mamikファンの末席に加えていただいたのは、対談ならではの余得でした(笑)。

 今はweb世界には出現されていないluneさんですが、彼女のその素晴らしい写真世界の虜になった僕は、この対談で心ゆくまで(そんなに分量は多くないものの)写真の話をしました。ご自身が素晴らしい写真をお撮りになるのに、僕の撮った写真を所望してくださり、とても感激して数枚お贈りしたのもいい思い出です。彼女が対談後に開いた別サイトの切ない文章を読んで、僕はディスプレイ前で泣いてしまった、ということもありました。できることなら、あの素晴らしい写真世界とジローくんを再び僕に見せてほしいなぁ、と思います。

 ちぃさんの旧ハンドルネームは「きちさん」でしたが、それは「きちっとしてる」からだと思うほど、対談もきちっと真面目に緻密にお考えくださって、実に気持ちよく構成することができました。「僕への質問もOKですよ」とお願いしたら、毎回質問を挟んでくださり、すづきさんから「質問責めにあってたじたじですね」と言われました(笑)。僕は対談のスタイルを「これじゃなきゃダメ」と限定するつもりは毛頭ないので、ちぃさんの質問責めはとても楽しかったのです。

 ピヨさん(現ノリコさん)は対談中で「自己中心的で短気」とおっしゃってましたが、僕にはまったくそういう所が感じられず、(妙齢の女性には失礼な言い方ながら)「ソフトで可愛いい方だなぁ」と思ってます。対談以前に美味しいマヨネーズやドレッシングをお教えいただいて、いまだにそれらを愛用していますし、僕を「優しい中性っぽい男性」と言ってくださったので、そういうイメージを崩さないように日々気をつけています。

 ノリコさん以降、約1年更新をせずに放置していましたが、久しぶりに連絡を取ったHaruni嬢と会えることになり、4時間にわたって話した内容を文に起こす、ということを対談史上初めて試みました。お互いの共通の話題が「シアトル」なので、読者諸氏のことを考えて一般的な話柄(僕らが同時に「気持ちいい」と思うこと等々)にフォーカスしましたが、惜しむらくは彼女がここに書いてくれている「シアトル通信」に触れなかったことで、つい先日会った時に「対談2回目もすぐやろう」と言い合いました。次回は彼女の魅力(僕が10才若かったら絶対にクドいてる)を引き出すために聞き手に専念したいと思います。たぶん無理だけど(笑)。「ではメールのやりとりで」っていうのも多忙な彼女には無理だろうしなぁ。


 10回を振り返ると、対談中に共通して「楽しい!」と思うのは、皆さんがお読みになる対談本編ももちろんのこと、往復するメールに付随するオフレコの小話が面白かったですね。極端なことを言えば、オフレコの話が楽しみで対談やってるみたいなところもあります(笑)。
対談の最中は「面白い面白い」と突き進んでゆくんですが、分量を制限しないとはいえ、ある程度の長さに抑えるために「ではこのへんで」とまとめて構成し、全文を一括送信してご覧いただき、OKなら公開、ということになるんですが、OKをもらえた喜びと同時に、なんだかお祭りが終わっちゃったような、内緒話を終えるような、なんともいえない寂しい気持ちになるのも事実です。


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